マクダウェルの転向
メモ。
村井忠康『知覚と概念--セラーズ・マクダウェル・「描写」--』(2012)より。
(・・・)マクダウェルは最近になって、以前の命題主義的な概念主義を放棄し、非命題主義的な概念主義を唱え始めた。彼のこの転向の背景には、知覚にそもそも内容を--概念的であれ何であれ--認めないトラヴィスの過激な素朴実在論への譲歩が窺われるが、転向を促した主な要因は、『心と世界』以降彼がカント解釈に深くコミットする結果としての、カントの直観概念の再考だ。しかし、マクダウェル自身は直観と描出の関係に注意は払っておらず、そのため、彼の新たな概念主義には「非命題的」という消極的特徴づけ以上のものは与えられていないように思われる。
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