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超システムと偶然性 [メモ]


 メモ。

 超システムとしての免疫系こそ、個体の生物学的個性を決定している。同一環境下で、同じ空気を呼吸しているにもかかわらず、一部の人間だけが花粉の季節にアレルギー性の反応を起こす。自己の内部環境にある主要組織適合抗原(MHC)のうち、HLA-B27という形質を持っている人は、持っていない人の百倍以上も強直性脊椎炎にかかり易い。それは、免疫系が、幹細胞の分化を通して免疫学的「自己」を確立する際に、「自己」内部に存在するHLA抗原に言及(リファー)したためと考えられている。この自己言及によって、反応性のレパートリーが変わる。

 もっとはっきりしているのは、一卵性双生児における抗体のV遺伝子の使い方の差異だ。一卵性双生児は、遺伝的には同一で、したがって生物学的には区別できない。ところが、抗体として作り出している免疫グロブリンのV領域遺伝子の使用頻度を調べると、けっして同一ではない。ランダムに構成されたV遺伝子の中で、双生児の片方はある特定の遺伝子を使っているB細胞を超システムの中に温存し、他方は別の一セットを超システムに取り入れた。こうして先天的には決定されない個体の個別性が作り出された。もし片方が百日咳にかかり、他方がかからなかったとすれば、この二人の免疫学的「自己」は一生異なるはずだ。それを決めているのはまさしく偶然だ。偶然を積極的に自己組織化のなかに取り込むことができるのは超システムのほかにはない。

(『意味論』P105-6)





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