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世界は存在しないとかそういうヤツ [無意味的会話術]


監「『M・ガブリエルはポストモダンの枠の中にある』と断言したS君こんにちは」
S「なんだよそれ、あとから言い換えただろ」
監「いいんだよ、オモシロければ」
S「ところで『なぜ世界は存在しないのか』の邦訳出たけど、読んだ?」
監「今、宗教のとこ読んでる」
S「ああ、ラカンのとこね」
監「そうだっけ」
S「宗教は二つあるってことだろ」
監「話が飛ぶね、まーそうそう。ひとつは大文字の他者でもうひとつは無限だと」
S「大文字の他者はフェティシズムの意味で」
監「そうそう」
S「なかなかイケるだろ」
監「オモシロい本だな」
S「そうだろ、推薦しておいてよかった」
監「Sはドイツ語で読んだの?」
S「英語」
監「まーアカデミックなことで」
S「英語くらい読めるだろ」
監「読めないよ帰国子女じゃあるまいし。ニューロン不足で特に思想書は読めない」
S「(ニューロンは関係ないだろ)こっちも帰国子女じゃないけど。で、どう思った?」
監「世界は存在しないって話と、新実在論の話は若干断絶がある」
S「さすがだ。監督ならそこら辺は必然的に連結していると言うと思ったけど」
監「もしかしてバカにしてたのね」
S「いや、さすがだ、って言ったじゃん」
監「だって、その二つについて書いているって最初に断言しているんだから」
S「その二つは、すこしロジックが飛んでいるんだよな」
監「新実在論の主張はある種の欲望の結果だとは思うけどね」
S「ガブリエルには大きなお世話だろう」
監「ピーター・ガブリエルは元気かな」
S「突然ロックの話をするのはやめなさい」
監「ちぇっダメか。・・・世界は存在しない話にしても、あまり納得はしなかったけど」
S「そこのロジックは整っていると思うけど」
監「でもそれ前提でその他のものが存在するんだからまーいいかと」
S「ああ、そういう意味か」
監「でもあえて蒸し返すと『世界』という言葉は存在するんだぜ」
S「いやそこにどういう意味があるのかってことだから」
監「つまり『世界という言葉はあっても、世界を考える意味はない』と」
S「そういうこと」
監「というより、こういう存在論的に『正しい』とされるロジックを手持ちにしていたほうが・・・」
S「応用が利くってことね」
監「そして、『正しい』が決まれば『狂気』を展開しやすいっていうか」
S「監督の目的はそこかよ」
監「手持ちのカードがヴィトゲンシュタインとガブリエルの二つになったのはありがたい」
S「そういってもらえると薦めた意味もあるかな」
監「一方でフロイトの『メタサイコロジー論』を読んでいるわけで」
S「普通はそこでいったんシェリングに行くと思うが」
監「悪かったな変わり者で」
S「で、フロイトと何かつながるの?」
監「今のところはまだ。ただこうやって意味論が復活してくると、人文系の存在価値も上がるかな」
S「それもガブリエルの狙いだと思う」
監「唯物論的科学主義との接近を匂わせていたメイヤスーとの差別化もできているし」
S「メイヤスーは唯物論がベースだからね」
監「周囲に対して人間がどう関与するかってことを中心に考えるのが新実在論ってことね」
S「そうそう、意味を持たせる・・・意味がないことも含めて・・・のが人間の役割ってこと」
監「しかし必然的ではないモノを偶然と呼ぶのかはともかく、確率として捉えると意味が出てくると」
S「あー? ああメイヤスーの話か」
監「それもまたひとつの『意味の場』によるものだと」
S「そういう面ではズルイ表現だよね、ガブリエルは」
監「そう。ご都合主義と言ってもよい」
S「それは言い過ぎだよ」
監「あと、新実在論の歴史的な位置づけの話で、形而上学の意味合いが曖昧だとか」
S「どういう話だっけ」
監「序章(邦訳P10)のとこでポストモダンは形而上学の派生形態だって断言している」
S「そうだね」
監「一方(邦訳P16)で形而上学は古い実在論だって言っている。これはおかしいだろうと」
S「なるほど、矛盾じゃないか、というわけだ」
監「個人的にはどうでもいい話だけど、気になる人はいるみたい」
S「たぶん『意味の場』が違うんだろうね」
監「オレはともかくSがそんなこと言うなよ」
S「・・・なぜ怒る」
監「そう逃げるのがガブリエルのズルイところだと主張するぞ」
S「主張してもいいけど笑われるだけだぞ」
監「・・・分かりやすい説明をお願いします」
S「(急に態度を変えやがって)ええと、確かに形而上学ってなんだよってことだな」
監「たぶんそれぞれの箇所で形而上学の定義が違うからだと理解しているけど」
S「形而上学ってのは『この世界全体についての理論を展開しようという試み』がガブリエルの定義」
監「その『世界全体』ってのが説明不能だから、定義が違ってくるのかなと」
S「一般的には、形而上学は、感覚を超えて実在を把握しようという思想の動きをあらわす」
監「そうだね」
S「だから素朴実在論を含むという考え方も、半分くらいはありえるかな、と」
監「そりゃそうだ」
S「でも別の観点では形而上学は抽象的で、実在的な見方と対立するって考え方もある」
監「なんとなくわかってきた」
S「形而上学と素朴実在論って、一緒のようで別のようで・・・難しい関係なんだよ」
監「時代としては同時代的だけど・・・ってことだろ」
S「そう。で、別と考えると形而上学は構築主義とかポストモダンと結びつく」
監「そうだな」
S「一緒と考えると形而上学は古い実在論と当然結びつく」
監「さすが、分かりやすい」
S「でも監督が言ったように形而上学は発想が『世界(全体)』に向かっている」
監「そうなんだよな」
S「だから存在論的には無理があると」
監「無理だからこそオモシロいってわけね」
S「そうなんだけど、この本ではオモシロいとは書かないし、主旨として書けない」
監「まー確かにジジェクと共著なんてのは、この本の主張だけではありえないからな」
S「だろ。単にドイツ観念論の愛好家という共通項だけで、共著などしないし」
監「神話とか狂気の話は応用篇ってことね」
S「監督の得意ジャンルだな。あ、それで『メタサイコロジー論』なのか」
監「そこまで考えていませんよっ」
S「あら、そう」
監「それはともかく、これでドイツ観念論が復活するといいけど」
S「無理だろう」
監「無理だろうなあ、残念ながら」
S「ヘーゲルくらいオモシロい哲学はないんだけど」
監「たしかに理解されにくいかもね」
S「カントですら『なにそれ』って人もいるし」
監「うーむ、なんとなく・・・唯物論がいけないって気がしてきた」
S「つまり共産主義とか科学主義が悪いと」
監「いや単純にマルクスが悪いって話でもないけどさ」
S「ドイツ観念論復活という話としては、マルクスが悪いってことでいいのかもよ」
監「・・・すげーじゃん。オレたちって今度は右翼宣言かよ」
S「それも無理があるけどね」
監「よし、ジジェクに対抗して右翼的ラカン派でも形成しようか」
S「いずれにせよ、監督と一緒にしないでほしいね」
監「なんだよ裏切り者」
S「いいじゃん、お互い日和見主義ってことで」
監「確かに。返す言葉はございません」


なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)

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  • 作者: マルクス・ガブリエル
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/01/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)









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