メディア [メモ]
メモ。
皆さま方、決心はできておりますの、子供らを手にかけて、できるだけ早く、この地を立ち去ろうという――。ぐずぐずしていて、あれたちを、もっとひどい人たちの、手にかからせるようなことはなりません。あの子たち、どのみち命はないのです。そうというなら、生みの母の手にかかるのが、せめてもの幸せと言えましょう。さあ、心を鬼にして――。何をためらおうというの、恐ろしいことだとはいえ、やらねばならぬことではないか。さあ、かわいそうなこの手よ、剣をお取り、さあお取り、苦しい世の始まりへ突き進むのだ。女々しい心に、子供の可愛さを、生みの子供の可愛さを思ったりするではない。せめて短いこの一日だけ、お前の子供らのことは忘れておしまい。そのあとで泣いてやればいい。あれたちを手がけるにはしても、可愛さには、変わりはないのだもの――ああ、それにしても、何という不幸な女だろう、このわたくしは・・・・・・。
(メディア ちくま文庫 ギリシア悲劇 III P134)
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