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主と奴の弁証法に関するきわめて安直な考察


 哲学者の岡本裕一朗は、ヘーゲルの『精神現象学』の「主と奴の弁証法」という名で一般に信じられている「主人と奴隷の逆転現象」など存在しない、と主張している。

 主と奴の弁証法(というか「逆転現象」)は、主にコジェーヴ(フランス現代思想の形成に大きな影響を与えたヘーゲル学者)による解釈でお馴染みだ。

 そして、ラカンやジジェクもそういう文脈で理解している。

 そう理解する動機はたぶん、マルクス主義への「配慮」だ。

 では本当にヘーゲルは「主と奴の逆転」を語っているのか、オレは原典に当たってみようとした。

 ところが身近に原典がないので、翻訳に当たってみることにした。

 なぜかウチには『精神現象学』の翻訳がいくつか(個人的な趣味で書いておくと、とりあえず岩波のデカい箱入り2冊と作品社を押さえておけばいい)あるので、読み比べてみたら、たしかに、少なくとも「主と奴」は逆転していない。

 そのあとのストア主義への言及を考慮に入れるならば、奴隷の「自主・自立性の獲得」は、主人と立場を入れ替えることではなく、「物」に対する(「物」という他者を経由した)労働を通して、達成される、と考えるのが自然だ。

 とはいえ、個人的には、この辺りは些細なことであまり問題視していない。

 ヘーゲルは、いろんな身分がある中で、あえて極端な「主人」と「奴隷」という関係をピックアップし、その「選択」の結果、後世に誤解されることになったのだと推定している。 






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