言語はなぜ その4
とはいえ、この本にはキリスト教の影響の話はあまり出てこないし、ドイツ観念論は出てこないし、ヴィトゲンシュタインの美味しいところは冷蔵庫の奥にしまわれたままだ。
フレーゲとフッサールの関係性にも触れていないし、そこからハイデガーがどう展開したかも書かれていない。
ラカン、ドゥルーズやデリダが、必要以上にソシュールの枠組み(の発展形)に留まり続けたことなど、まったく書かれていない。
にもかかわらず、イアン・ハッキングはそういったものすべてを、言外に、行間に可能性として落とし続けた。
書こうと思えば書けるにもかかわらず、簡素性と明解性を重んじたために捨象したというワケだ。
個人的にはそれで成功だったと思う。
その落とされたモノをどのように拾うのかは読者に任されている。
だからオモシロい。
言語はなぜ その3
それ以外にも、もちろん主体のあり方も違うし、背景も違う。
個人的にはキリスト教的神が西洋哲学思想の枠組みに入り込んでくる、その力強さにウンザリしていた。
その関係性というか歴史的経緯を理解させてくれたのがこの本だ。