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神経言語 [メモ]


 メモ。

 通常の人間の言語のほかにもさらに神経言語というものがある。これはしかし通例健康な人間の知るところとはならない。この神経言語のイメージを得るには、いくつかの言葉を一定の順序で記憶に刻み込もうとするときの過程、つまり、たとえば学校で暗唱せねばならない詩を生徒が暗唱するときとか、教会で説教しようとする聖職者がその説教を暗記するときの過程を思い浮かべていただくのが一番よいと思う。そういったとき言葉は声に出さないで暗唱される(これは説教壇から会衆に要求される黙祷の場合と同じだ)。すなわち人間はそれらの言葉を口に出して言うときと同じように自分の神経を振動させるのだが、その際本来の音声器官(口唇、舌、歯等)はまったく動かされないか、動かされるにしても、それは偶然にすぎない。

 正常な(世界秩序に適った)状況においては、この神経言語を使用するかどうかは、もちろんその神経を持つ当事者の意志のみにかかっている。どんな人間も本来他人に強いて神経言語を使わせることはできない。しかし私の場合には、これまで述べてきたように私の神経病が危機的な転回を遂げて以来、いまや私の神経が外部から、しかも絶えることなくひっきりなしに動かされるという事態が生じた。

(シュレーバー回想録)





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