4五角戦法その7 (2)▲1一角成に対して△8七銀 [4五角戦法]
※一箇所更新(赤字)しています※
(2)▲1一角成に対して△8七銀
この形は「4五角戦法の最後の望み」と認識されていた関係で、専門家が多数いるモノと推測される。軽く流して誤魔化したい。・・・いや、誤魔化しきれず中途半端に終わりそうな予感がする。
(2-1)△8七銀に▲8七同金
まずは▲8七同金をみてみる。
定跡では▲8七同金は後手有利となっていたし、今もそう思っている人が多いのではないか。もちろんオレもそう思っていた。以下はその「既存定跡」の東大将棋ブックスの手順から。
29手目~▲8七同金△7九飛▲6九香△6七角成▲5八銀△同馬▲同金△7八銀▲6八金△8七銀成▲4五角△7二銀▲6四歩△3三桂以下後手有利となっている。
是空さんによると、上記手順39手目▲4五角に対して△7二銀では▲2一馬とすれば先手が良い、なので△7二銀ではなく△3三桂とすれば後手もなんとか指せそうとのこと。
で、そもそも39手目▲4五角というのが「変」と感じた是空さんは、代わりに39手目▲2一馬とすれば先手が良いのではないか、とのこと。この▲2一馬が意外にもあまり検討されていないようで、これで良ければ▲8七同金は有力だ。なお、この▲8七同金では、この「39手目▲2一馬」以外にも、先手の良くなりそうな指し方が発見されている。機会があれば番外篇(?)で紹介したい。
以下①△8九飛成②7二銀③7八金④7八成銀 の4通りくらいか。
①△8九飛成には▲1一飛△6二玉▲6四歩△5二金打▲4五角△7八成銀▲6三歩成△同金▲7八金△7二銀▲7五桂にて先手勝勢。
②△7二銀なら▲4五角で先手指しやすい(?)。
③△7八金には▲4八玉△6九金▲5八金△7八成銀▲1一飛△6二玉▲6四歩△6八金▲同金△同成銀▲6三歩成△同玉▲3二馬△5九飛成▲3八玉△3二銀▲6一飛成以下 即詰み
④△7八成銀には▲4五角△6八成銀▲同玉△7六飛成▲5八玉の局面で(1)△2二金打か(2)3八金。
④(1)△2二金打には▲同馬△同銀▲6三角成△5二金打▲9六馬△8五角▲同馬△同竜▲6一香成にて先手優勢。
④(2)△3八金にa▲7七歩では△4八金打▲6八玉△6五竜で紛れる・・・
b▲3九銀打△2九金▲1一飛△3九金▲同銀△4一銀▲3三桂にて先手優勢。
(bの手順中▲1一飛のところ、▲2三桂などでは△6六桂▲同香△同竜▲3一桂成△5四香とされて形勢不明とのこと。)
▲2一馬では▲9六角でも先手良しだが、その前の手が△8七銀成ではなく不成なら▲9六角はない。なので、38手目は△8七銀不成が正解かも。
33手目の▲5八銀に対して△同馬では後手が良くならない・・・とすれば△8九馬(△2三馬)くらいだが、是空さんによるとそれでも後手はなかなか良くならないらしい。詳細は省略。
つまり、「▲1一角成に△8七銀」の是空さんの研究では、29手目▲8七同金~39手目▲2一馬の手順が最善で先手が指しやすいとのこと。これが本当なら画期的な結論だ。
ちなみに飯島本では29手目~▲8七同金の場合は△7九飛に▲6九香ではなく▲4八玉を本線として以下後手良しとの見解(P161-162)になっている(▲6九香は、以下△6七角成▲5八銀△同馬▲同金△7八銀まで「後手良し」と打ち切っている)。
29手目~▲8七同金△7九飛▲4八玉△6七角成▲5八銀△同馬▲同玉△7八飛成▲6八歩△8七竜▲2一馬△8九竜で後手よし。
(2-1)△8七銀に▲7七馬
次に、一般にこの形での本線とされていてたのが27手目▲1一角成に△8七銀▲7七馬。これを是空さんの研究で確認してみよう。
29手目~▲7七馬△7六銀不成▲6八馬△8八歩▲7七歩△6七銀成▲同金△8九歩成▲5六歩△9九と▲8五飛△2六香▲4五飛△8九飛▲6九歩△2八香成で形勢不明。
(2023年9/22更新)AI(水匠5)検討によると、上記手順の▲5六歩がよくない(互角になってしまう)らしい。代わりに▲6四歩や▲8二歩を勧めている。
この手順は、飯島本(P173)と違い△8九飛▲6九歩を入れると▲6二歩がない分後手が得という展開になっている。
38手目~△9九とでは△8八飛(▲8五飛の両取りを打たせない意味)もある。手順は次の通り。
38手目~△8八飛▲5八銀△9九と▲3五馬△3三桂▲3四香△4一桂▲4五馬△同桂▲3二香成△同銀▲3一飛△1四角で形勢不明とのこと。・・・相手の狙いを消し合う展開です。
上記42手目△3三桂では△2三角もありそう。42手目~△2三角▲6四歩△6五香で形勢不明とのこと。
ちなみに飯島本(P172)では、△2三角に▲6四歩△同歩▲1一飛で先手よしの見解となっている。
また34手目△6七銀成りで△8九歩成もありそう。
つまり、29手目~▲7七馬△7六銀不成▲6八馬△8八歩▲7七歩△8九歩成とし、
以下35手目~▲7六歩△9九と▲3六香△3三桂▲2一飛△4一桂▲3四銀△同角で難解とのことです。
また上記38手目△3三桂では△8九飛もありそう。以下(1)▲4八玉△3三香で難解。(2)▲7九金△6七角成で難解。
33手目~▲7七歩では▲4六飛も考えられる。
東大将棋ブックス(P136)では▲4六飛に△8九歩成▲4五飛△9九と▲5八玉△8九飛で難解な形勢とのこと。
また、飯島本では▲4六飛の実戦を紹介(P163)、手順は東大将棋ブックスと同じ。
おまけの話だが、実はこの▲4六飛は加藤一二三九段の研究として有名だった。
▲4六飛以下は、△5四角▲8八金△8七銀成▲7八金(以下△同成銀▲同馬)で先手良し・・・が加藤九段の研究(沢田多喜男『続横歩取りは生きている』上巻P113)。
ところが、さらに先がある。
▲7八金△同成銀▲同馬の次、40手目~△8七金▲7九馬△7四飛▲7六歩△同角▲6八馬△9四角▲7五歩△同飛▲4八玉△8八歩▲7六歩△同飛▲同飛△同角△5四角▲5六香が一例で難解とのこと。ネットで見つけた手順です。
加藤九段の研究がよく知られていた時代の昭和62年王位戦中原・内藤戦で、▲4六飛ではなく▲7七歩だったというのは、▲4六飛ではよくならないことを察知していたのか違うのか・・・それは指した本人にしかわからない・・・以上おまけの話でした。
この「▲1一角成に△8七銀」の形は有力な変化が多くて難しい。紹介したのはほんの一部でしかない。▲8七同金と▲7七馬の2回に分けてもいい程の量だ。それくらいこの指し方は愛好家の研究対象になっていた。
上の手順を考えるに、27手目~▲1一角成に△8七銀▲7七馬では先手がなかなか難しい、というのが現状の結論か。・・・しかし▲8七同金で先手が良いなら、後手としてもなかなか指しにくい。このあたりは今後も結論が変わっていくのかも(願望)。
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